早稲田サロン(2024.12.14)
12月 早稲田サロンは 寒風吹き荒(すさ)ぶ14日(土) 夕刻、定例の居酒屋「壱番館」に
先月 第十代小金井稲門会長に就任された辻本英一さん(1969年政経卒)を講師役に
お迎えし、混迷と分断を極めるこの時代をどのように生きるかを、先の太平洋戦争
の敗因を分析し教訓として活かす「温故知新」のタイトルでご講話いただきました。
師走の繁忙期とあって、店側の要望で大テーブル一卓の制限の下、総勢14名がひし
めき合い熱気を帯びた中での講演となり、盛会のうちにお開きとなりました。
終戦の年の11月に誕生した辻本さんは、母が身重と知らず同年春に出征された父が
復員後 毎年お盆に欠かさず戦没された先輩の墓参りをする姿を見て育ったことも
あって、太平洋戦争が自ずと身近に感じられる存在になった、と述懐します..
かねて「文化人類学」の分野に関心があった辻本さんは、太平洋戦争と云う極限状況
に置かれた当時の為政者らが辿った思考・判断とそれに基づく行動パターンに人間
の「本性」が偽りなく現れ出たに違いない、と喝破します..そこから 国力に歴然た
る差のある米国を相手に何故日本が、抜き差しならない泥沼の太平洋戦争に突入し
て行ったかの原因を探ります..そして欧州大陸がナチス・ドイツに席巻され 孤立
状態となった同胞・英国を助けるべく米国の参戦が焦眉の急となっていた状況下で、
自国を大戦の戦禍に巻き込まないことを公約に異例の大統領四選を果たしたルーズ
ベルトにとって、戦端を開く「大義名分」として国際連盟を脱退し日独伊三国同盟に
加盟した日本を恰好の標的に、先制攻撃を誘うシナリオで真珠湾攻撃を誘発させて
米国民の参戦機運を一気に煽る結果に繋げたものと分析し、結論付けます..
その後の経緯は歴史が示す通り、一握りの上層部の驕りと油断、空疎な精神論が闊歩
し、冷静な判断は抑圧される中で南方の燃料供給基地も米国に抑えられ、310万人も
の同胞が一蓮托生の下に、死に追いやられる結果になったのは周知の通りです..
勝つ場合は偶然が重なって勝つことはあっても、「負けに不思議(偶然)な負けはない」
との格言があるように、敗因には必然的な理由が必ず伴うものです。日本軍の暗号も
米国側にすべて解読されていた事実が示すように、物資面のみならず情報戦に於いて
も国力の差は歴然で、すでに日本は相手方の敵ではなかった、ということです..
民主主義と権威主義の国家間のせめぎ合いが先鋭化し、混迷と分断の様相を極める今
日の世界情勢の中でわたしたちは「太平洋戦争の戦訓」を一つの拠り所に、この時代を
「冷静な耳目と頭脳」で見聞きし思考・判断していくよう、今後共心掛けたいものです。
最後になりましたが、辻本講師が唱える「80年周期説」をご紹介します。
人の寿命はおよそ80年をサイクルとして考えることが出来、歴史上の大変革事象もこ
れと同じ80年をおよその周期として発生する との仮説。これを、国情が安定した江戸
時代以降で見れば、鎖国令(1639年)享保の改革(1716年)寛政の改革(1787年)明治
維新(1868年)終戦~民主主義国家誕生(1945年) 2025年?
2025年は終戦から80年の「フシ目の年」。混迷のこの時期に、何か大変革が起こるか?
因みに明治維新の際の「ザンギリ頭+洋服」と「ちょんまげ頭+和服」の関係は、2025年に
於ける「デジタル人間」と「アナログ人間」に比喩できる。但し、この「デジタル人間」組が
今後、何らかの大変革時に直面し明治維新に続く近代化を成し遂げた「ザンギリ頭」組の
ような働きが出来るかどうかについては.. 「AI様でも~!判るめエ~!」
最後に辻本講師近影と講演風景写真に「講演資料」を添えご報告とさせていただきます。
添付資料:「歴史から学ぶもの・310万人の命と戦争」 全 5頁
「歴史から学ぶもの・310万人の命と戦争」2024年12月早稲田サロン講演資料
以上
早稲田サロン世話人 岸川 公一、 矢吹 淳
2024年12月21日