早稲田サロン(2025.09.13)
9月早稲田サロンは去る13日(土曜)夕刻 カラオケ「うたたネ」を会場に小金井稲門会
新規会員(今年2月入会)の鴨下隆一さん(1982 理工卒)にご登場願い、「AI時代を迎えて
~ 日本の材料技術と半導体・情報産業の歴史と未来 ~」のタイトルでお話戴きました。
パワーポイントでの説明を備え付けの大型モニターで行なうカラオケ店 での初の試
みに総勢14名が個室に集い、周囲の雑音が無い中で鴨下講師の話に耳を傾けた2時間
余でした。
小金井で生まれ育った鴨下さんは 1982(昭和57)年に早大理工学部金属工学科を修了
卒業後 同年4月に大手総合商社へ就職します。1980年代後半から15年間を情報通信
事業部門で北米プロバイダー企業との合弁事業(AOLジャパン設立)などに奔走します
が: 亡父の「金転がしは止めてモノづくりへ戻れ!」の遺言が胸に刺さって40代半ばで
総合商社を早期退職し国内大手金属メーカに転職します。退職までの17年間を 特殊
金属・半導体向け材料の開発・製販や米及び独子会社の経営・統合に携わり、2020年に
会社生活を終えます。
1980年代後半と云えば 我が国半導体産業が世界の売上シェアの50%強を誇った絶頂
期ですがその背景には通産省の声掛けでNECや東芝など 大手情報産業企業が団結し
官民一体で1976年発足した「超LSI技術研究組合」の下で国内材料メーカーが徹底した
省力化と品質管理で安価で高品質の半導体製品を供給可能とした国を挙げての努力が
ありました。しかしここで暗雲が垂れ込めます。不当廉売で自国製品を閉め出してい
るとする米国半導体産業界の訴えに時の米政権はダンピング輸出禁止と日本市場の開
放を日本に迫り 1986年に「日米半導体協定」が締結されます。同協定は1996年に失効
するもののこの間価格維持を強いられ競争力を失った日本製半導体は1992年にメモリ
半導体分野で韓国サムソン電子に売上シェア1位の座を明け渡すなど、その凋落ぶりは
眼を覆うばかりで2019年の売上世界シェアは10%まで落ち込んでしまいます..我が国
半導体の歴史は通産省が育て,崩壊させたと云えます。
しかしこのまま手をこまねいて自動車産業のみに頼るのでは日本の経済安全保障上も
危険な事は云うを待ちません。本格的AI時代を迎えた2020年代の今こそ国産半導体の
再起とシェア奪還の絶好の機会を迎えたと鴨下さんは云います。その具体的起爆剤と
期待されるのが、北海道千歳を本拠地として2022年8月に設立されたラピダス社です。
ちなみに同社創業社長は1978年早大院 理工学研究科を修了し日立製作所に入社、武蔵
工場 (在小平市)で永年に亘り半導体事業に携わって来られた方だそうです。
国産の最先端ロジック半導体の開発製造でAI時代の世界を日本が再びリードしGDPの
牽引車になる日も遠い夢ではないと鴨下さんは云います。そのためには知識偏重でな
い真の考える力ある人材とモノづくりの匠(たくみ)の育成が急務だと説きます。
話は展開して大変興味深い孫の世代の真の教育論にまで議論白熱するうちに時間とな
り、お開きとなりました。
最後に講師近影と集合写真、講演風景写真 および講師略歴を添付し報告といたします。
以上
早稲田サロン世話人 岸川 公一、矢吹 淳