小金井稲門会創立50周年記念事業の一つである市民公開講座の実績を踏まえて、継続的に市民公開講座を開くための文教部会(文化教養部会の略)を発足させる運びとなりました。 |
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部会長 : 藤森 勝年氏 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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鍔山 英次 先生講演会「武蔵野の名水群と小金井の自然環境」 日程 : 平成22年5月15日(土) 14:00〜16:30 会場 : 商工会館萌え木ホール 講師 : 鍔山 英次 先生(写真家) 講演表題 : (写真で観る)武蔵野の名水群と小金井の自然環境 鍔山先生は早稲田大学出身の全国的に有名な写真家で、世界を股に活躍され、東京・就中多摩・小金井の歴史、風物に造詣の深い方です。 主催 : 早稲田大学小金井稲門会 後援 : 小金井市教育委員会 当会主催の市民公開講座はこれが三回目。50周年記念事業以降、文教部会が組織(藤森委員長)されて初の開催となる。 当日は素晴らしい天候で会員以外の参加者も多く、八王子のプロカメラマン、元都庁の公害研究所所長等も来られ盛況であった(80名)。 鍔山先生は昭和30年から小金井前原町に住まわれ、当時は前原小はなく一面田んぼで、貫井南の名人に井戸を掘ってもらったこと、汲み取りも続いていたが、あっという間に雑木林が消え、宅地化がすすんだことなど回想された。そしてこの辺りは野川の源流である国分寺の湧水群(昭和の名水百選にあげられたものもある)、東久留米の湧水などに囲まれ非常にすぐれた環境にあると述べられた。 講演は、下記の項目に分けられ、映像ストリーとして、古い地図や美しい名水の景色、新聞記事などの写真をふんだんに使って、歴史地理的、生物学的視野に立ち且つ抒情に溢れた独特の内容であった。250枚に及ぶそれぞれの写真はネガから起こしてパソコンにおとすという作業で編集されたとのこと、この日のための資料づくりに大変な労をおかけしたようである。 映像ストリー「武蔵野の名水群と小金井の自然環境」 1)武蔵国と河川 2)近郷の名水 3)玉川上水と小平 4)野川の源流 5)野川の自然 6)落合川 7)「武蔵野夫人」小説と映画の狭間 8)名勝「小金井桜」 9)野川の川霧 10)川に想う 以下、講演の中から ・縄文時代は大宮の辺りまでが海だった。時代を経て治水のために利根川、荒川の大掛かりな改修工事が行われた。河川の改修のあとを見ると、自然の川が右に左に蛇行しているのに対して、殆どが直線的になっている。なかでも人間によってその姿を大きく変えられたのはボルガ川。かくして大地を血管のごとく這っている水脈は人間によってずたずたに切り裂かれた感がある。 ・近郷の湧水群は、三鷹、調布、国立、府中、神宮に散在する。 ・ 玉川の玉の意はきわめて清冽な水、のことであったろう。江戸時代の玉川上水の末端は浜離宮の仙台藩のところまであった。 ・ 国分寺市では一本の椋の木の根元から湧水があるのがみつかり、それを生かそう、湧水博物館を作ろうなどの構想がある。殿ヶ谷公園が宅地化されようとしたときも反対運動があって園内の湧水も守られた。行政が何を大事にして特色を生かすかは大切なこと。 ・ 東久留米市は駅を建てるとき、富士展望台を作った、そして駅から富士山を臨む道も作った。この市を流れる落合川は平成の名水百選に入っていて、映画武蔵野夫人の舞台にもなった。 ・ 大岡昇平の「武蔵野夫人」の影響で私は小金井に来た経緯があるが、映画の川の景色は野川でいくら捜してもなかった。映画の脚色をした福田恒存に聞くと野川ではなく落合川ということがわかった。このことが発端で親友だった大岡と福田は絶交している。大岡は友人の富永次郎のところに一年ほど滞在してこの小説を書いた。何年か前大岡先生を小金井にお招きしたことがあった。元のままの処、変わってしまった処を先生は懐かしく訪ねておられた。 ・ 清流の指標となる昆虫のひとつ、シマアメンボウは表面張力の高い清流にしか住めない(濁水は表面張力が低い)。 ・ 野川には青大将など蛇がたくさんいた、この状態が生態系は健全である。 ・ 桜は人の手を経ずして咲くことはない。小金井の五日市街道沿いの桜は一千百十数本(番号が付いている)植えられている。奈良吉野と常陸桜川の由緒正しい山桜が先人の手で後世に引き継がれてきた。60%は山桜、他にかすみ桜、大島桜など銘木が集中している。毎年十数本が倒れる。659番は来年その姿を見ておきたい老木である。後人のためにだれかがこの桜を守っていかなくてはならない。 いま名勝小金井桜の会(会長 石田精一)事務局TEL042−301−5132がある。日本全国歩いてみて気づいたのは、新しい町にはさくらの古木がないということだ。 ・晩秋から厳冬にかけて、野川に沿って川霧が出現する。ダイナミックに白いベールが辺りを覆い、日の出とともに跡形もなく消え去る。三鷹も国分寺も湧水は多いのに霧は出ない。川霧は小金井特有の風土的景観である。 *お話を聞くほどに、みずみずしい小金井の恵みが髣髴し、後人のためにこの環境を守らなばならないのだ、と痛切に感じた。鍔山先生は日々私たちを守っている自然のすばらしさとともに、悲しい人間の驕りの危うさを教えてくださった。 今回もまた感動的な公開講座となりました。(國分副会長記)
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