会友、斎藤育雄さんとソプラノ歌手の渡海千津子さんの二人コンサート“Tea for You with M(Mはmusic)”が、6月24日、国立の喫茶ルーム『わとわ』で行われた。斎藤さんは、早稲田の露文を出た後、東京芸大で学び、現在、指揮者、ピアニストとして活躍しておられる。渡海さんは、オペラ、リサイタルで活躍しておられる。
  コンサートは、斎藤さんが好んで弾かれるというグリークの小品のピアノ演奏何曲かと、渡海さんによるイタリヤ歌曲を中心に構成されていた。ペールギュントしか聞いたことがなかったグリークであるが、その作品の抒情的美しさに癒されたり、渡海さんの豊かな声量と感情表現で歌われるイタリヤ歌曲を聞くと、イタリヤにいるかのような心地に誘われたりした。
  あまり歌われていないというマルトゥッチ作曲、パリアーラ詩の亡き人を偲んで作られた『追憶の歌』は、コンサート前日に小林麻央さんが亡くなったこともあり、漂う哀感が心にしみる。プーランク作曲の『ホテル』は、「場末の小さなホテルで、窓から差しこむ太陽の光で煙草に火をつけることだけが、私の望みだ」というアポリエールの小さな詩によるものだ。お二人により語られるこうした曲の説明やエピソードは、曲への興味をより深くした。後半に歌われたダニー・ボーイなどの英語の曲、そして日本語で歌った『埴生の宿』などでは、言葉の美しさにも気づかされた。音楽、詩、言葉とさまざまな刺激を受けたコンサートであった。
 渡海さんは、歌唱力のみならず、情熱あふれるパーソナリティで聴衆を魅了し、お二人の組み合わせの妙も印象的であった。大衆がコンサート会場で音楽を聞くようになったのは、ベートーベン以降のことで、それ以前は、もっぱらサロンで楽しまれていたという。演奏者の人柄にふれるサロンでの演奏は、音楽の醍醐味であろうと感じさせられた。ぜひ、もっと多くの会員とともにお二人のコンサートを楽しみたいと思った(文責・田口信子)。

参加者:鎌谷功 木多村長昭 田口信子 西村正臣 藤井康博